やさしい風がふいている、ヒープリの30分間

プリキュア新シリーズが放送開始となりもうすぐ1か月。現在第3話まで放送され、いよいよ明日は3人目のプリキュア(黄色)が仲間入りする。まだまだ物語の序盤の序盤なのだが、30分×3回の放送で既にその世界観が完成しつつあるのは、さすがともいうべきクオリティ!

 

というか、第1話から柔らかくやさしい風が、本当に心地よくて切なくてあったかい。そこで、明日の放送を楽しみにしている土曜日のうちに、第3話までの印象を書いておきたおいと思う。

癒しの陽と陰

物語は、主人公の花寺のどかが自然豊かな新しい町、すこやか市に越してくるシーンから始まる。風に髪をなびかせながら、新居に到着。大きな庭付きの家に、広くて可愛い自分の部屋。癒し効果抜群の色彩とタッチ。前シリーズ「スター☆トゥインクルプリキュア」が、好奇心に満ちたキラキラ感満載の作画だとしたら、こちらはひたすらヒーリング感。主人公のビジュアルも話し方も癒し効果のある作りになっている。

そんな癒し系主人公ののどかは、新しい町と家に大喜び。はしゃぐのどかは、町へ飛び出す。そして、まだ物語が始って数分という間もないこのシーンで、早くもこのシリーズならではテンションが垣間見れる。それは町へ走り出していったのどかを見ながら母親がこぼした一言。

「仕方ないわ。だってあの子、やっと自由に走れるようになったんだから」
『ヒーリングっど♥プリキュア』第1話より

 

プリキュアの製作ターゲットは幼稚園生~小学低学年の女児、実際の支持層は3歳~未就学児の女児だと聞いたことがある。いずれにしても、少女漫画を自分で読んだりするには及ばない、幼い子どもたちである。

そんな子ども向けの、いわゆる"ヒーローもの"なのにいきなり主人公の陰ともいえる部分を伝えてきたヒープリ。

その「陰」の部分に、何ともいえない不安を感じながら続きを見てると、町に繰り出したのどかが、まさかの追い打ちをかけてきたからびっくり。

芝生の広がる緑が輝く公園に仰向けになって両手を広げ、目を閉じてこんなことを言ったのだ。

「生きてる~、って感じ…」
『ヒーリングっど♥プリキュア』第1話より

もうびっくり仰天。いま、なんて言った?状態。新シリーズ初回の、重要かつ貴重な冒頭の15分でこのニュアンス、出しちゃうの?未就学児に、自然のなかで手足を思い切り伸ばして生命の壮大さと喜びを噛みしめるようなこの感覚、出しちゃうの?と。

満員電車に揺られ、朝から晩まで馬車馬のように働き、やっと取れた久しぶりの休日にしなびた温泉に浸かって「あ~…自然って癒されるわぁ。。山って、いいなぁ」なんて脱力状態を経験するまで、まだまだ10年20年と猶予がある子どもたちに?

子どもたちの感受性を信じてる

そして気づいた。
幼児向けアニメってもしかして、だからこそ尊いのではないか。
分かるor分からない、伝わるor伝わらない、という判断基準で物作りをするのではなくて「伝えたい」を描くことに真摯なのではないか。

大人になると、「この人にこれを言っても伝わらない」とか、仕事でも「これを消費者に伝えるならこうしないとダメ」とか、よく言えば親切、悪く言えば相手を自分の基準でジャッジして相手を信頼しない。

でも幼児アニメって、もしかして全面的に子どもたちに感受性に信頼と希望を託してるんじゃないか。

あ~…尊い。
まさか、自分がプリキュアを観るようになるなんて思いもしなかったけれど、「育児は育自」とはよく言ったものだよ。我が子に広げてもらう世界、価値観ってすごい。

桜舞う風の中でキュンする大人たち

そして第2話。2話は、夕陽が沈む丘でヒーリングアニマル(敵を倒すため一緒に戦うプリキュアになってもらう人間を探してる)のペギタンとラビリンの会話シーンがもう…。
からの、のどか自身が語る、過去と現在の気持ち。もう…見て!公式が第1話と2話を2020年3月31日23:29まで無料配信しているからっ!!(配信終了)

「のどかの事情も、気持ちも聞かないでいろいろ決めちゃって、ラビリンお医者さん失格ラビ…ラビリンはのどかに助けてもらったみたいに、のどかが難しいことはラビリンが助けるラビ。だから、のどか、やっぱりラビリンのパートナー、続けて欲しいラビ」
『ヒーリングっど♥プリキュア』第2話より

このシーンの、桜が舞う美しいことよ。風が、ふんわりやさしくて泣ける。ふつくしい…。ここのラビリンとのどかのやり取り、心の肉球をキュンキュンさせてるのは子どもと一緒に見ている親たちの方でしかない。し、こんなシーンを子どもと一緒に共有できる喜び。まだ難しいから分からないなりに何かを感じている我が子の横顔。あぁ、ありがとう東映アニメーション様テレ朝様。

助け合いと勇気の分け合い

そして3話。2人目のプリキュア(青)が仲間入りする。のどかのクラスメイト、沢泉ちゆ。青キャラらしく、勉強も運動もできる優等生設定なんだけど、ちょっとこの子も闇を感じさせる。
しかもその闇が、のどかの場合は「病気をしてきたけどこれからはもう大丈夫」という、陽に向かっている暗さに対し、ちゆの場合は事情は明らかになってないけれど人為的な出来事によって傷を負ったような、そしてまだそこから抜け出せていないような感じ。

でも、だからか印象深いセリフをさらっと喋る。

「わたしはアナタより大きいから、少しは力になれると思う。もし、勇気が足りないなら、わたしのを分けてあげる。大丈夫、わたしがいるわ。わたしは、ちゆ。あなたは?」
『ヒーリングっど♥プリキュア』第3話より

ナニコレ。なんなのこれ、惚れちゃう!だいたい、ちゆが志願して戦わなかったら3話目にして絶体絶命の状況で、ちゆのお陰で助かったという感じなのに本人は「助けられた」感覚なのは、どういうこと。

第2話でラビリンは、のどかが身体的に難しいことはラビリンが助けるからパートナーでいて欲しいと言った。第3話でパートナーを組んだペギタンとちゆの場合は、勇気を分け合うという。ペギタンは人間が怖かったり臆病な描写があったから余計にこのペア設定とがグっときた。

そして、ちゆがはっきり言っていたのだが、このシリーズのプリキュアが戦う理由は大切な場所を守りたいから。もう、テーマが壮大よ。友情、愛情のために戦うのではなくて「場所(地球)」という自然のために戦っている。ビョーゲンズという地球を蝕む敵と戦うプリキュア。いかにも令和だし、2020年っていう感じ!

3人目のプリキュアに望むこと

さて、明日はやっと今のところ「陽」のテンションでいっぱいの3人目のプリキュアが仲間に!もうこの子は、ひたすら素直なピュアな陽であってほしい。傷みを知っているからこその陽、なんてしなくていいよ…?
のどかとちゆを、めいっぱいに照らして引っ張っていく存在であって欲しい。だってなんだか、「誰かのために役に立ちたい」とか「大切なものを失いたくない、守りたい」とか、現時点ではそういうマインドの2人だから、1人くらい「楽しくって可愛くって強いわたしってサイコー!」って気分で、2人にいろんなことを気づかせて欲しい、って思ってしまうのよ。これからどうぞよろしくね、3人目。


ヒーリングっど♥プリキュア 第4話予告 「カワイイ!なりたい!キュアスパークル誕生」