インターネットはタイムカプセルみたいだ。
初めてネットに触れたのは、たぶん1996年くらい。父がプログラマーで、それよりも前の、物心がついたころからパソコンは家にあった。
とても場所をとる本体とデスクトップモニター。モニターは、アイボリーのような黄ばんだクリーム色をしていて、画面はゆるやかなカーブで、モニターというよりはTHEブラウン管。小さいころ住んでいた狭い借家の居間で、存在感を放っていた。
父の膝上に座り、私はよくゲームをさせてもらっていた。今でこそPCゲームなんていうカテゴリーが存在するけれど、そんなものとは程遠い、もちろんオフラインのゲーム。
パズルゲームやキャラをマウスで操作して、ゴールまで死なないように進めていくゲームを楽しんでいた。
あぁ、あのパズルゲーム、秀逸だったな
もう一度やりたい、あの画面を拝みたい……
リメンバー・パズルトピア
そう思ってちょっと検索してみた。
「90年代 パソコンゲーム パズル 遊園地」
すぐに私が欲していた画像が視界に入った。
すごい、ネットってやっぱりすごい!
「パズルトピア」
そう、なんかそんな名前だった!
会いたかったよ、パズルトピア。
動画を開くと、ノスタルジーがあふれてきて悲しくないのに涙が出ちゃう。
PC98 良BGMの名作パズルゲーム「パズルトピア」Part1 パズル力(りょく)カンストを目指す [挑戦シリーズ]
まだ若かった父と私で時に張り合うように遊んだ。でも、最後の最後まで父も私も全てのステージはクリアできなくて。当時は、「正解が知りたい!」もかなわぬ夢。じれったい悔しい気持ちを覚えている。
ゲームは、遊園地のアトラクションがそれぞれパズルゲームになっていて、クリアすると色がつく。私の遊園地は殺風景だったのに対して、父の遊園地はカラフルで、「大人のすごさ」のようなものを、このゲームで知った気がする。
でも父の遊園地にも、いくつか色のついていないアトラクションがあった。それを目の当たりにして「コレはただものではない…」と思っていたんだけれども、それもそのはず。
30年の時を経て、時は令和。
その理由を今日、知った。
監修がパズル学の権威、故・芦ヶ原氏とあって内容は極めてハイレベル。歴史ある問題も多く取り入れられており、中にはちょっとした「パズル好き」程度では到底太刀打ちできない難題も含まれています。おそらくコンプリートした人はかなり稀なのではないでしょうか。
oldoldgames.blogspot.com
これ、相当!
▲ 監修したパズル作家のNobこと芦ヶ原伸之さんのwiki
こんなスンバラシイお方のパズルに触れていたなんて、ちょっと感動。しかもさっきのサイト、全解答が出ているではないか。30年前、私を苦しめたパズルたちよ、もうこわくないんだ君たちなんて。あぁ、もう一度プレイしたい!
***
はじめてのインターネット
そんなこんなでやってきた96年(だと思う)のある日。父が、私の好きなタレントについて書かれた出力を100枚近く手渡してきた。
いわゆる、ファンサイトの印刷。そこには、私が知らなかったタレントの詳細な生い立ちや出身学校などプロフィールから、過去のテレビやラジオでのエピソード、インタビューなどがぎっしり印字されていた。
衝撃的だったし、父の説明を聞いてもよくわからなくて、でも無限の宇宙みたいな世界がコンピュータにはあるんだというゾクゾクを感じた。
わたしはその印刷された紙を大切に何度も読んだ。ファイリングしたりマーカーを引いたりして。どこの誰がまとめてくれたのかは分からないけれど、書店で買えるアイドル誌の何倍もの価値があった。
あのころのネットの世界は、なんだか平和だった。
アフィリエイトやPRが横行していなくて、みんな自由に好きなものや趣味のことを穏やかに心地よく発信していた気がする。
セキュリティやウイルスの課題はあったけれども、2020年の現在よりは遥かに安全で健全な場所。
私が中学生になるころには、徐々にインターネットは普及。「無料ホームページ作成」サービスなるものも随所から出てきた。
もちろん私も「やってみたい!」と、あのころの主流(?)だった「●●の部屋」的なサイトを開設。サイト、というよりあの頃は「ホームページ」ってみんな呼んでいたよね、略してホムペ。
自分のパソコンなんて持っていないので、父のパソコンを使わせてもらって、黙々と作業していると、電話を使いたい家族から苦情が入ったり、「まだやってるの!?」と受話器を上げてチェックされたり。
英語よりも世界共通で万能そうなhtmlに感動しながら、キリ番カウンターをせっせと設置したりBGM設定したり、「ごゆっくりどうぞ ( ^-^)o旦~~」という文字を謎に左から右へ動かしたり…
結構な時間を費やして完成したホムペを、いの一番に父に見せたら、父はなぜか感激して褒めてくれ、お小遣いまでくれた。
時をかけるFC2
そして時代は、個人ホームページからブログへ。そういえば、私も大学生のころ、なんかやっていたな~と思って検索したら
あった。
kimiiroomoi43.blog41.fc2.com
恥ずかしすぎる。
こんなものが、インターネットの世界に場所を借りていていいのだろうか。
最後の更新が、「誰も気にしてないだろよ…」という声が自分からも聞こえてくる「更新をお休みします」宣言。3か月坊主で終わってるのもこの上なく恥ずかしい。
あぁ消したい。せめて最後の記事だけでも消したい何その足掻き。
だけどアカウント情報まったく分からない。本格的にどうしても抹消したくなったら、運営問い合わせればいいや、と思っているけれど、まだしてない。
地球上の誰一人も見ていない、時間が止まってしまった私の世界があるようで不思議な気持ちになれるのをおもしろがっている。デザインも文字使いも書かれている内容も、2007年の自分のにおいがするから。
宇宙は続くよ、どこまでも。
老若男女問わず、個人がネットの世界を泳ぎ回る時代になった。日常的にブログやSNSを日常的に楽しみ、なんとなく触れなくなってもアカウントを削除することもなく放置したまんまだったり、敢えてそうしているケースもあったりする。そうしてインターネットの宇宙は、今日も膨らんでいく。
アクセスする人がいなくなっても、宇宙のほんのどこかにその人の時が止まっている空間が、インターネットの世界には無数にある。今度エンジニアに、宇宙に果てがあるのか聞いてみたい。果てがないのなら、ブラックホールはあるのだろうか。